まぼろしのすり身：香川県善通寺市
【かめや食堂】
こういうお店との出会いがあるから止められない！
偶然にしては今回ほんま出来すぎの出会いだった。
 この日はお客様の告別式があり、急遽営業のSと一緒に観音寺方面に出かける事になった。
（どうでもいい話だが）2005年7月25日から1年間免許取消しという処罰を受けることになった僕はどこに行くにも誰かにお願いをして連れて行ってもらわないと食堂にすら行けない欠格者に成り下がっていた。
告別式が終わり次の商談は高松14時。
となればこの高松までの道中で昼ごはんを食べなければならない。どこで食べるかという選択肢は無限にある訳だが偶然にもこの日は善通寺を経由して帰ることになった。
今思えば、取消し処分から37日が経過したこの日
神様がのこり50週間(1年を54週間と計算した場合)せいぜい頑張れよ！
という想いで（どんな想いや！）くれた夏のボーナスみたいなもんと勝手に受け取る。
この店の存在は前々から知ってはいた。
…が勇気が無くて入るに至らなかった。
というか外観からは本当に営業しているのかさえ疑わしい状況だった。
外から見えるおかずを入れるショーケースには何もおかずが入ってない。しかしこの日ちょっと違って見えた。よく見てみるとこの入り口の暖簾がとても力強く、きれいでまだまだやる気に満ちたものに感じたのだ。
入り口を開ける常連らしき方（じいちゃんばぁちゃんの3人組み）発見してひとまず安心。
初めての店に来たときは、まず常連さんの食べてるもんを確認する（これ食堂の常識）
すぐ後ろのおばちゃんが『親子丼』。
その前のおっちゃんは『中華そば』。
そのもひとつ後ろのおっちゃんが飲みながら『焼いたさんま』。
どれもうまそうやんか。こりゃあちょっと期待できるぞ！
（この時点では大方ハズレ引いたか当たりなんかもう分かります、ハイ）
このお品書きを見てアナゴ丼頼まん訳にはいかんやろ。
でもあのおっちゃんの食べてた中華そばも魅力的やし、今度いつ来られるか分からんし頼んでまえ。
「穴子丼一つと中華そば」（これボク）「玉子丼」（営業Ｓ）
これだけでも結構な量なのに何を思うたか店内のショーケースを覗きこむ。
ここでこの店の最大の魅力を発見してしまった。
ありそうで中々無いのがこれ。
写真のように一皿に少しずつおかずが盛っているおかずセット。
どうでもいいようなおかずセットと違ってどれもバランスよくおいしそう。
ボクのようにあれもこれも食べたいイヤシイ系、他店では大抵取り過ぎて食べすぎの上に、味付けがイマイチの場合は一皿最後まで食べる苦痛と戦わなければならないリスクも背負うことになる。
なんて良心的なセット。しかも一皿250円。
「今日さんまの刺身食えるけど食べてみる？」
「ええなぁ〜、ほなひとつもろとこかぁ〜」みたいな常連さんの会話を横目に
注文が揃うまでの間、二人でこのお皿を摘みながら待つことに。
何気に食べた『すり身』に度肝を抜かれた。
失礼だがこんなところで食べられるようなすり身では到底なかった。
うっわぁ〜うっんまい〜♪(￣∀￣)ｂ
「このもひとつあるん、食べてみ！」と営業のSに。
二人で顔を見合わせて
どうなんこれ、ちょっとひびるやろ。
魚貝類の風味が口いっぱいに広がって濃厚で外側はカリッとしていて・・・。
これほんますごいやん！（＠⌒〜⌒＠）
そうこうしている内に先に中華そばが出来上がる。
「ごめんな、全部手作りでやっとるきんもうちょっと待ってなぁ。」
「これ待っとる間のサービスやけど食べてみる？」と出されたのが
先ほどの常連さんに話をしていた『新さんまの刺身』。
「ハイ喜んで！」
おじさんの話では時々高松の魚市場までご自身で仕入れに行き、良いものを選んできているのだという。先ほどの『すり身』も聞いてみて納得。
車海老とハモを贅沢に使った練り物表面を少しカリッと焼いていたのだ。
「冷凍もんは一切使わんで。そんなことしたらうちのお客さん逃げてしまうわ。」
常連さんも帰った頃で一段落したのか、段々とご主人の舌が滑らかになってきた。
「隣のパチンコ屋が流行っとった一昔前は、お昼でもこの店の外にまで並ぶほどお客さんが入っとったんで。まぁそれでも夫婦二人年金生活やきん、あんまり欲かかんと、こんくらいで今は丁度ええんよ。」
『中華そば』をすすりながらおじさんの話に耳を傾ける。
『中華そば』もやさしい味付け。正に昔懐かしい中華そば。
しかしこの『中華そば』にもちょっとしたこだわりがあった。
鶏がらスープだけでなくアゴ（とびうお）を隠し味に使ってスープダシをとっていた。
上品な中にコクがあって後味がとてもいい。
お見事(￣ー￣)ｂ
最後まで待った穴子丼も付け焼きにして、丁寧に仕上げていた。(ちょっと味は濃い目)
この地で商売を始めて40年。
今も日曜祭日以外は休まず営業している。
午前中は手作りのおかずが評判で、ご近所の常連さんに手作り弁当を作っているらしい。
数は増やしたくても増やせない。おいしいものを丁寧に作りには数に限度がある。
毎夕決まって酒のアテを食べにここのおかずを求めてやってくる常連さんがいるそうだ。
このお客さんが帰ったらその日の店仕舞いになる。そんなたった一人のお客さんに対しても「お昼だけの営業でもええんやけど、うちを当てにしてきてくれる限りは続けんとなぁ〜」とおじさんは言う。
「また近くに来た時は寄ってつか」
「電話番号は(0877)62の1＋2＋2は5と憶えといて！片手で足りるやろ」
って結構商売熱心やんか。
まだまだ頑張って続けて欲しい善通寺を代表する大衆食堂でした。
（あぁ〜もう一回あの『すり身』食べたいわぁ〜。）
食堂メモ
| 店名 |
かめや食堂 |
| 住所 |
香川県善通寺市善通寺町1丁目8-8 |
| 休み |
日曜祭日 |
| TEL |
(0877)62-1225 |
| 営業時間 |
12:00〜夕方常連さんが帰るまで |
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