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『銀シャリ師』～兵庫・神戸市～

【一夜一夜】

あるお客さんから「とにかく、うまいご飯を出すお店に連れて行ってくれ」と言われた。新しいお店の参考にしたいのだそうだ。色々迷った結果、以前紹介した【一夜一夜】に行くことになった。お客さんお二人を乗せ一路三ノ宮へ。高松中央インターから京橋インター（三ノ宮付近）まで一気につながった（板野～鳴門開通で）ため高松市内からの所要時間は約2時間。
前日の予約段階で午後7時以降は予約でいっぱいだった。前回同様、お釜の見えるカウンター席に座りたかったので開店（午後5時）にあわせて店に到着。お店についての詳細は今回省略させていただく（コラムNo11参照）。

開店間もない店内は、1組のお客さんとわたくし達のみで、リクエスト通りカウンター席に座ることが出来た。通常であれば、まず飲み物を注文するところであるが先にご飯を注文しておくのがわたくしのここでの決まり。名物の蛇紋岩米（じゃもんがんまい）を3人で食べることにする。ビールを少々と一夜干をゆっくり頂きながら待つこと30分。再び、あのものすごいご飯が登場した。

お客さんの二人は今回初体験なのでどんな反応をするかちょっと楽しみであった。案の定、蓋を開けた瞬間、そのコメの輝きに言葉を失っていた。しかしその横でわたくしも同様に言葉を失っていた。前回訪れた時は3月下旬、まだまだコメも美味しく食べられる時期である。ところが今回は7月下旬。正直一番コメが美味しくない時期である。にもかかわらずこの「新米のような輝きはなんなんだぁ～」
お釜を自分の所に引き寄せもう一度中を覗き込む「すごすぎるぅ～」
当初、お客さんの驚きの反応をちょっと余裕をもって内心楽しむはずの予定が案内している本人が一番驚いてどうすんねんといった感じ。

冷静になってシャリ切りをし、これまた前回同様の「粘り具合」に感心しながらお客さんに取り分ける作業（よそう）に移る。芸術品のようなコメの立ち具合に、ほれぼれしながら食していく。

最初の1杯目は軽めによそい、ご飯そのものを堪能する。3人とも無言のまま1杯目完食。2杯目は少し味わいながらホウ葉味噌と一緒に食べる（信州か中部地方の食べる味噌だったと思うが、ホウ葉の上にのせ炭火であぶりホウ葉の香りと少し焦げた味噌がこれまたご飯との相性バツグン）。味噌とご飯のマッチングは日本人の天才的な発明の一つだと思う。味噌の香りに負けないこのご飯。歯ごたえも香りも素晴らしい。あくまでご飯が主役のこの食べ方にはお客さんも大満足の様子。

今回もう一つラッキーなことがあった。開店間もない慌しくない時間を選んだのが幸いした。この店の店長で「銀シャリ師」の後谷さんにご飯についての話を色々聞くことが出来たのだ。男前の銀シャリ師にちょっと緊張しながらも。

自分「実は自分米屋なんですが、四国からこのご飯がどうしても食べたくて来ました。」
銀シャリ師「わざわざ四国から来て頂いてありがとうございます。」
自分「今回2回目ですけどほんまここのご飯は美味しいです。参りました。」
銀シャリ師「いやぁ～、色々試行錯誤の連続でなんとか今のご飯が出せるようになったんですよ。今でもお客さんによっては、ここの電球の光具合がええから、こんなにツヤがあってうまそうにみえるんとちゃうんとか言われますよ（笑）」
こんな具合に話が弾み前回どうしても気になっていた質問をしてみた。
自分「ここのお釜は特注ですか？」
銀シャリ師「厨房は特注ですがお釜は釜飯用のものを使ってますよ」
自分「そうですか。それとそのお釜の蓋ちょっと見せてもらえますか？」
銀シャリ師「いいですよ。でもかなり重たいですよ！」

実際に持ってみると2KGぐらいはある特殊パッキン付きの圧力蓋であることが分かった。

昔からお釜の蓋は出来るだけ重いもののほうが良いと言われているがこの蓋の重みと圧力がかかることにより、この芸術的なツヤとコメの立ち具合が生まれるということなのだ。しかしその後も色々聞いてみると火力もこのご飯に合わせて少し強めに設定したり水加減等やはり銀シャリ師の技が随所に見られた。

最後に、銀シャリ師「余裕がある時に一釜づつ炊くことは練習すればすぐに出来るようになります。お客さんの注文が集中した時（約10釜ぐらい）に時間差でご飯の出来具合をタイマーに頼らず自分自身で感じ取って出せるようになるには相当練習が入りますね。」

わたくしも思わず弟子入りさせてほしいと言いそうになるほど男前の銀シャリ師に酔わされた今回（2度目）の【一夜一夜】でした。　

食堂メモ

店名	一夜一夜（いちやいちや）
住所	神戸市中央区中山手通1-9-12　M′Sビル1Ｆ
休み	078-325-1818
TEL	日曜日・祝日
営業時間	PM5：00～翌1：30（LO）